処置前
「おばあちゃん、遠いから来られないんだ。ぼくの声を入れて送ったら、電話じゃないときも聞けるでしょ」
処置後
「送るものは、ありません。手紙も、別にいいです」
閉院後の施設資料を公開しています
アクセシビリティRECORDS PRESERVATION
PRESERVATION REVIEW / 12 RECORDS
W-03で確認された保全例外と同じ特徴を持つ、未登録資料12件の照合記録です。
PRIOR RECORD REQUIRED
この資料群は、W-03の分類再評価後に開きます。紙片の時刻と西棟図面を照合し、最初の保全記録を確認してください。
W-03を確認するDISPOSAL BOX 02
未登録物 3点廃棄箱2号の物品票に、対象番号のない保管物が三点あります。同じ箱から見つかった聞き取り抄録と照合してください。
処置前
「おばあちゃん、遠いから来られないんだ。ぼくの声を入れて送ったら、電話じゃないときも聞けるでしょ」
処置後
「送るものは、ありません。手紙も、別にいいです」
処置前
「退所したら、一人で電車に乗ってみたい。終点の一つ前で降りると、海が近いって聞いた」
処置後
「行きたい場所はありません。家の人が決めたところで大丈夫です」
処置前
「弟は、丸いパンの真ん中だけ先に食べるんです。帰ったら、ぼくが焼いたのを渡したい」
処置後
「家で作りたいものはありません。食事は用意されたものでいいです」
本人・言葉・保管物が三件とも一致しました。返却候補へ分類します。
C-08自分の声で昔話を録り、孫へ送信。
C-11海辺の駅までの往復券を本人が購入。
C-14弟と台所に立ち、丸パンを一緒に焼く。
PROCEDURE REVISION
1981 / 19861981年版の手順書には、退所前に行う「返却確認」があります。1986年版では、その欄だけが削除されています。
欄外注記:保管は一時的なものとし、本人の同意なく継続しない。
返却照合および本人確認の記入欄なし。
保管物:メトロノームの重り
「間違えて止まるんじゃなくて、好きな曲を最後まで弾いてみたい」
保管物:赤い首輪札
「家に帰ったら犬と暮らしたい。散歩は朝でもいい」
保管物:青い水泳級札
「何秒か数えないで、端までゆっくり泳ぎたい」
1981年版の欄外番号に従い、返却工程を元の順へ戻してください。
1981年版の返却工程を復元しました。空白だった三件を返却候補へ分類します。
C-17自宅で、好きだった一曲を止めずに最後まで演奏。
C-21保護犬の一時預かりを本人名義で申請。
C-24時計を外し、休みながら25メートルを泳ぐ。
CROSS-REFERENCE
訂正印 3件関係のない三種類の施設資料に、同じ訂正印が残っています。いずれも、廃棄されたはずの言葉を本文の余白へ書き戻した記録です。
西棟郵便受け、差入口を補修。
長期貸出一冊、返却期限を延長。
未現像フィルム一本を保管庫へ移動。
| 職員番号 | 氏名 | 担当 | 在籍 |
|---|---|---|---|
| N-12 | 西川 澄江 | 医事 | 1971–1983 |
| N-17 | 新田 直子 | 記録 | 1974–1998 |
| N-21 | 野口 文夫 | 用度 | 1976–1982 |
RECORD CLERK / N-17
1974年から1998年まで西棟の記録係として勤務。返却欄が空白のまま退所処理へ回ることに気づき、本人の言葉と保管物を照合できる写しを施設資料へ残した。
返却先不明。廃棄せず、照合可能な形で残す。診療記録の外に写したことについては、私が責任を負う。1998年 引継ぎ票
職員記録追記:2011年死去。退職後を含め、当該資料へのアクセス記録なし。
C-31短い近況を絵はがきへ書き、自分で投函。
C-36途中で返した本をもう一度借り、続きを読む。
C-42フィルムを入れたカメラで、駅前を一枚ずつ撮影。
OPERATION REVIEW
1978–1986試行開始時の趣意書と、六年後の評価票では、同じ処置の目的が異なる言葉で記されています。
退所後の生活を繰り返し考えることが、現在の不安を強める場合がある。本人が望むときに限り、その考えを一時的に保管し、退所前に本人へ返す。
評価項目:睡眠、食事、本人の不安申告、返却確認
処置後、自発的な将来申告が減少し、指示受容が改善した場合、情緒安定が認められたものとする。
評価項目:将来申告回数、指示受容、処置継続日数
返却確認は退所手続を長引かせ、処置効果の集計対象にも含まれない。次回改定時に様式から除外する。
欄外異議:返さないなら、預かったとは言えない。記入者 N.
保管物:赤い布見本
「退所の日に着る服は、自分で選びたい。白じゃないものがいい」
保管物:カレーの献立カード
「家のカレーはみんな同じ辛さだけど、ぼくが二つに分けて作る」
保管物:進路票の複写紙
「戻ったあと、どこへ行くかは自分で決めたい。決めるのを休んでいただけだから」
後年の制度が「安定」として数えた状態を選んでください。
扱いやすくなった状態を、制度が「安定」と記録していました。
試行時の目的は、不安を一時的に和らげることでした。六年後、職員は返却を集計対象から外し、退所手続からも削りました。西棟には通常の療養で回復した記録も残っています。それでも、この13人に預かったものを返さなかった事実は変わりません。
C-48赤いコートを試着し、迷った末に本人が購入。
C-52甘口と辛口を二つの鍋に分け、家族へ振る舞う。
C-57本人名義で夜間の木工講座へ申込み。
FINAL HANDOVER
N-17 / 4 pages新田の引継ぎ票は、四つの施設台帳へ一枚ずつ綴じられていました。ページ番号に従い、最後の記録を元の順へ戻してください。
返すのは、昔と同じ願いではない。
いまの本人が、選び直せること。
記録が残すべきなのは、
失った未来ではなく、返した事実である。新田 直子 1998年3月
13件すべてについて、本人・元の言葉・保管物の照合が完了しました。
RETURN REVIEW
13 / 13 READY返却候補13件の照合表です。確定後、保管物に残る痕を現在の本人へ返し、資料区分を更新します。
| 対象 | 本人 | 言葉 | 保管物 |
|---|---|---|---|
| C-03 | 一致 | 一致 | 白い紙の花 |
| C-08 | 一致 | 一致 | 録音テープ |
| C-11 | 一致 | 一致 | 海辺行き時刻表 |
| C-14 | 一致 | 一致 | 丸パンの紙袋 |
| C-17 | 一致 | 一致 | メトロノームの重り |
| C-21 | 一致 | 一致 | 赤い首輪札 |
| C-24 | 一致 | 一致 | 青い水泳級札 |
| C-31 | 一致 | 一致 | 未使用の絵はがき |
| C-36 | 一致 | 一致 | 図書貸出票 |
| C-42 | 一致 | 一致 | 未現像フィルム |
| C-48 | 一致 | 一致 | 赤い布見本 |
| C-52 | 一致 | 一致 | 献立カード |
| C-57 | 一致 | 一致 | 進路票の複写紙 |
確定後は、現在の本人が自分で選んだ行動を返却確認として記録します。過去の希望を、そのまま実行したものとは扱いません。
RETURN CONFIRMED
13 / 13返却照合 完了
資料移管区分を更新しました。
旧区分 廃棄予定資料
新区分 返却記録・永久保存
CURRENT RETURN LOG
本人の希望により、当時の呼称と返却後の行動を記載しています。
苗売場を二度まわり、青い花を一鉢選んだ。
昔話を一本、自分の声で録った。送り先は孫。
海辺の駅まで、自分で往復券を買って出かけた。
弟と同じ台所に立ち、丸パンを焼いた。
途中で止めず、好きだった曲を最後まで弾いた。
保護犬の一時預かりを申し込んだ。
時計を外した。休みながら、端まで泳いだ。
短い近況を絵はがきに書き、自分で投函した。
途中で返した本を、もう一度借りた。
駅前の商店街を、一枚ずつ写真に撮った。
赤いコートを試着し、そのまま持ち帰った。
甘口と辛口を二つの鍋に分け、家族へ出した。
本人名義で、夜間の木工講座へ申し込んだ。
FINAL TRANSFER NOTE
新田直子が残した返却一覧13件に、返却完了日を記入しました。該当資料は廃棄対象から除外し、経緯を含む返却記録として保存します。
13人とも、今度は自分で選びました。
冬野療養院資料保存会
追加照合の進行は、この端末のブラウザにだけ保存されます。W-03の記録は初期化されません。